仕事中のお昼。
あるお店で なつかしい人に会った。
やりきれない思いは、自己満足でも 書くしかない。
2年前、Hさんと連絡が取れなくなった。
「おかけになった電話は 現在...」
もしかして...と思ったけど もしも亡くなったのだとして
私に連絡がこないということは、きっと そっとしておいた方がいいんだ
と 思って、でも いつかふっと、出会えることを願ってた。
6年前、私はヘルパーとして Hさん宅に在宅訪問していた。
Hさんの奥さん(Mさん)が、脳こうそくで右半身の片麻痺になって
主に調理メインで一時間、リハビリも兼ねてMさんと いろんな会話をしながら...
というのが内容だった。
自分の親と同じ歳の方だけど、私はMさんの、竹を割ったような性格が
とっても好きで、自分の体が思うようにならないなんて、どんなにもどかしいだろう
と思うのだけど、全然うしろを見ない明るさが、とっても素敵で。
ご主人のHさんは、Mさんの好きな食材や、バランスを考えた食材を
冷蔵庫にいつもストックしてくれていて
できるだけ仕事を早く切り上げて、ヘルパーのいる時間帯に帰ってきて
3人でいろんな話をしながら Mさんの麻痺した身体をマッサージする。
どんなに 遅く帰ってきても毎日ぜったいしてくれる、ってMさんが言ってた。
断片的にしか 聞いていないけど、
フランスで柔道の指導をして たくさんのお弟子さんを育てて、
たくさんの方に慕われていたのが よくわかった。
豪快で、はっきりした物言い、握手したら握りつぶされそうな手、
だけど おもしろくて、とってもあたたかい心をもった方。
ニカッと笑いながらフランスでの生活の話、
飛騨高山の故郷の話、柔道の話、お酒の話、コーヒーの話、
いろんな話をしたのを思い出す
ある時、Hさんが早く帰ってきて 生きた上海カニをたくさん買ってきた。
内心、私 こんなん調理できません!!!汗
と思ってたら、おっきな鍋を出して ドカドカ生きたまま放り込む...
「どーすると思う?」 そのまま加熱??
「熱くて暴れるやろ、紹興酒飲ませるんや」ニカッ!
一番忘れられない エピソード。
私が 親の仕事を手伝うかどうか、決めかねていた時
「家族が 大変なときに 助けるのは 当然や」 さらっと言われた。
ヘルパーを辞めることを決心した言葉だった。
それから2年くらい経った頃か
休日にMさんと話していて、Hさんの足がパンパンで心配だという。
自分のことは ほとんど話さないので Hさんの足を見ると 尋常じゃない。
その時は お酒も程々にしないと…って話していたけど
顔色の悪さが 少し気になってた。
夏の日、Mさんから電話があって
「うまく話せないから 主人にかわる...
…もしもし、元気か?Mが どうしても 貴女に話してっていうから...
今 入院してて、白血病なんだ。運よくドナーが見つかって...」
すぐ 病院にお見舞いに行った。
面会謝絶 の札。
でも 扉 全開 「おー!!来たんかっ!」
汗;;;(ダイジョブなんですか??)「だいじょぶ、だいじょぶ!」
隣には Mさんのお兄さんが先客で来られていた
看護婦さんも たぶん、Hさんが
病人が自分で大丈夫といってるんだから大丈夫 って聞かないから
見過ごしてるんだろうか
Hさんのベッドは ビニールで囲われ、クリーンエアーで陽圧にしてあった。
(会ったらあかんやん)
伯父ちゃんのことが フラッシュバックした。
Mさんのこと、気にされていた。
変わらない元気さ、病気が逃げていく。そう 思ってた。
ちょうど その頃、伯母ちゃんの髄膜腫もまた進行してきた。
こぼれ落ちるように、できることができなくなる伯母ちゃんを目の当たりに
Hさん Mさんとも すっかりご無沙汰してしまったな...
と 思って電話したら 繋がらず、そのまま今に至る。
今日のお昼に Mさんと、付き添っていた息子さんに会って
いろんなことが 思い出されて...Mさんは 涙を流して よかった、会えてよかった、って
貴女に つたえたかったけど、私 なまえがわからへんから...って
ずっと昼から Hさん と Mさんのことを思っている。
Hさん、ほんとに強くて 芯があって あたたかくて 楽しくて
すてきな方でした。
出会えたこと、とってもうれしかったです。
Mさんのことを ほんとに大事に、しんどくても、酔ってても、
麻痺がちょっとでも良くなるように、マッサージをしている姿、
言葉じゃなくて、想いのある行動がほんとにあたたかい人
Mさんを残して 先に旅立つことが どんなに心残りだったろうか
自分では 思うようにできないことばかりで Hさんが頼りだったのに
Mさん、どんなに つらい思いをされたろうか
そして これから 麻痺と、老いとが重なる不安は どんなにだろうか...
ヘルパー時代には、なんで人生ってこんなに不平等なんだろうかって
やりきれない思いが たくさんたくさんあったけど、
それでも HさんとMさんを見ていると、すごく自然に、受け入れていて
家族のあたたかさがあった。不幸せな感じはまるでなかった。
幸せは 条件じゃなくて、自分がつくるもんだってこと、
教えてもらったんです。
Hさん、遅くなりましたけど、ほんとうにありがとうございました。
Mさんと会わせてくれてありがとう。また Hさんの思い出話、いっぱいしますね
きっと そっちの世界でも 楽しんでますね
でもお酒は ほどほどに..
合掌