洞窟へ
-心とイメージのアルケオロジー/港 千尋 著
おもしろい というか、私の興味に たくさん情報をくれた本でした
難解な部分も多くて すっかり理解できなかったけど
旧石器時代遺跡の年代測定がテーマだった大学時代...
ふたつの出会いが。
研究室の先輩が 二上山のサヌカイトで石器を作っていて
真似して サヌカイトや黒曜石で作ってみたけれど
剥片を取るのが どんなに難しいか 知ったとき、
旧石器人って 真剣に スゴイ。 と思った
そして
はじめて 黒曜石のナイフ形石器を手にしたとき
とっても 美しい.... と思った。
これが 石器 との出会い
洞窟壁画を はじめて図録で見たときの
細胞が沸き立つような 「衝撃」
シンプルな線で描かれた バイソンや馬、洞窟の起伏をうまく使って
迫るように描かれた構図、エネルギッシュな無数の手型、
しかも これが2,3万年前の私たちの祖先が描いたものだなんて
はじめて知ったときには、衝撃でしかなかった。
これが 洞窟壁画 との出会い
私の中の、これら ふたつの出会いは、自分の中で
系統づけできていなかったけれど
この本が 結び付けてくれました。
「旧石器時代」 と
人類の進化とともに生み出されてきた石器に軸をおいた編年は
前期、中期、後期と区分されているのですが その中で
「ルヴァロワ技法」と呼ばれる高度な技法で石器をつくったのは
中期旧石器時代(ムスティエ文化)、およそ20万〜3万年前
私たちホモ・サピエンス・サピエンスが出現する前の
ネアンデルタール人類で、
ルヴァロワ技法の石器というのが どんなものかというと...
石器に適した石選びに始まり、それまで 石のかたまりを
そのまま叩いて整形していた方法ではなく、
下図のように 亀の甲羅状のものをまず作っておいて、さらにそこから剥片を
取り出してたとえば尖頭器にする、という めちゃくちゃ高度な技術なのだ
私がかつて手にしたナイフ形石器は(たとえば下図) もう一段階後の石器文化になり、
洞窟壁画が描かれたころと重なってくる。やっぱ 美しい..
(別の話題になるけれど、石器は わたしたちホモ・サピエンス・サピエンスの
「手仕事の原型」のように思います・・・)
http://www.avis.ne.jp/~tsutsumi/kyuseki/kyuseki.htmこの人類進化の時間軸、「万年」単位のスパン。
想像なんて、できません^^;
ここまで精緻なものを作り上げるには、頭の中に どのような方向に
どのような強さで叩けば目的の形が取り出されるのかが プログラムされていて
且つ、最終段階のイメージがなければできない。
と 港さんが書いているように、
モノをつくるということにおいて 石器を作るということは
「創造力」という面で相当に発達していると思うのだけれど、
石器をつくり始めた頃からみれば、洞窟壁画が描かれるようになる時代は
「数百万年」も 後だ ということ。
人類の進化として 石器をつくる ことと、描くこと をつなげて考えると、
この半端ない時間差は とっても不思議
「描く」ってことは とっても本能的で、言葉よりも、道具を作ることよりも、ずっとずっとプリミティブ
だと思っていたんだけれど.......
もちろん 考古学において「残っている」ってことが大前提になるし
そこに 年代を評価できるものがあるかどうか も重要だから
残りやすい石器と、残りにくい壁画を 単純に比べていいものか わかりませんが
この本では、さらに 脳の発達、心理学や アフリカのサン族の伝達手段など
いろんな方面から考察しているのですがよぅわかりませんでした^^;
でも
人類史の中で わたしたち現代人は 縄文時代でおよそ1万年前ですから
ほんの「ぴっ」とした点でしかないわけで
なんだか とっても急速に進化してきたように思いますが...
ショーヴェ洞窟の壁画を見ると、やっぱり 本質的には とくに、変わっていないように
思ひます